ーーー目次ー(読みたい回をクリック)ー
第1回: 安心への方法論
第2回: 安心の正体
第3回: セキュリティとはなにか
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第3回: セキュリティとは一体何か
安心に至るための基点
本連載では、第1回「安心への方法論」で安心に至るための3つの方策について、それに続く2回目「安心の正体」で「安心とは何か」について、それぞれ考えてきました。最終回の今回は、本連載の本丸である「セキュリティ」について考えてみます。
昨今の体感治安の悪化、組織からの情報漏洩、新しい法律の制定などをきっかけとして「セキュリティ」という言葉が、これまで以上に使われるようになってきています。この、セキュリティとは一体どういう概念なのでしょうか? もともとは、「心配(cure)から離れている(Se-)」という意味なのですが、いろいろな日本語の辞書で、セキュリティを引くと「安全」「保安」「防犯」「安心」「保護」「防衛」・・・などと出ているのみで、ぴったりとした定義がありません。
米国では9.11同時多発テロをきっかけとして「Department of Homeland Security」が設置されましたが、このDHSの役割を的確に表す適切な日本語訳は未だに見たことがありません。 これはセキュリティ(Security)という言葉のもつ曖昧性から来ているものと考えます。セキュリティという言葉には、明らかに安全や安心とは違う概念が含まれています。サンフランシスコ講話条約と時を同じくして締結された日米安全保障条約(呼称)では、英文の名称「Treaty of Mutual Cooperation and Security between the United States and Japan」に含まれているSecurityという言葉に対して「安全保障」という訳語をあてています。このような訳を与えることで、「安全」とは違うニュアンスを表現しようとしたのでしょう。
私たち、セコムIS研究所セキュリティコンサルティンググループでは、このセキュリティという言葉に対し「オペレーション(日々の営み)が、運営主体によってあらかじめ定められたプランにのっとって運営され、理由のいかんによらず、それが阻害されないこと」という定義を与えています。
セキュリティを考えるうえにおいては、その組織における「オペレーション」という概念が欠かせません。そして、このオペレーションを遂行するのに必要不可欠なものが、前回述べた「財産」であり、その組織における「守るべきもの」なのです。「守るべきもの」はなぜ守る必要があるのでしょうか? それはそれが守るべきものが何らかの要因によりダメージを受けるとその組織におけるオペレーションが回らなくなるからです。
(このように考えると、「米国のオペレーションを阻害する原因に対応するための省」と、DHSについて、より実際に近い解釈をすることができるようになります。)
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個人のプライベートな生活という観点では、組織とは「家庭」であり、オペレーションに相当するものとは、家庭における「日々の平穏な生活」であると言えます。すなわち、個人の生活におけるセキュリティとは「起こるかもしれない色々な出来事に影響されず、平穏な日々の生活が続くこと」と定義できます。
「起こるかもしれないいろいろな出来事」のことをインシデントと呼びます。窃盗被害(泥棒)、火災、自然災害、病気、怪我などが、家庭生活を送るうえでのインシデントの代表格になるでしょう。これらのインシデントが現実のものとなると、生活環境や健康といった財産が影響を受け、それによって家庭における「日々の平穏な生活」というオペレーションが回らなくなります。
泥棒が話題に出ると「わが家には盗られるものがない」と言われる方がおられますが、泥棒によって損なわれるものは、本当は金品ではなく、「日々の平穏な生活」なのです。一度、泥棒に入られると、物理的に何も盗られなかったとしても、精神的なダメージが先に立ち、安心して過ごすことができなくなってしまいます。これは、泥棒に限らずインシデント全般に言えることです。個人の生活にとって、インシデントとは「日々の平穏な生活」を損なう出来事すべてなのです。その意味で、個人の生活という分野においては、「日々の平穏な生活」そのものがセキュリティであると言っても良いのかも知れません。
皆さんのご家庭において「日々の平穏な生活」とはどういう状態でしょうか? ほとんどの人は、「日々の平穏な生活」については、あって当たり前だということもあり、なんとなく思っているだけで、明確に考えたことはないのではないかと思います。しかし、あって当たり前だと思っている「日々の平穏な生活」は、個人が生活するうえでのセキュリティそのものなのです。
日本や米国にとどまらず、世界の至るところにおいて、犯罪だけでなく地震・風水災を始めとする天災や、人為的事故が報告されるようになっています。このようなインシデントが発生し、被害者となる前に、読者の皆さんのご家庭で、何らかの対策を施すことで、将来遭遇するかもしれない被害を小さくすることができるのです。自分だけは被害に遭わないという根拠のない思い込みは捨てて、出来るところから対策を行ってください。この対策とは、物的なものにとどまらず、心構えや家族で決めておかなければならない事項の再確認等を含みます。
「日々の平穏な生活」についてはっきりとした考えを持つことが、安心に至るための本当の意味での基点であり、ご家庭におけるセキュリティについて考えることになるということを忘れないでおいて頂ければと思います。
セコムIS研究所 セキュリティコンサルティンググループ 甘利康文
イラストレーター・アーティスト http://amaringohouse.blog18.fc2.com
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